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ノイファイミリーの日常、息子の成長など・・・
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家に戻ると昼食の用意ができていた。
午前中からのんびり風呂に入って帰ってすぐに食事にありつくなんて、
本当に贅沢な身分だ。
だけどこうやって家族みんなと一緒に食事ができるのも、後少し。
だから美味しいはずの食事にも、ちょっぴり寂しさが混じっていた。
みんなに優しく親切にされればされる程、
その先に待ち受けている別れが辛く悲しくなる。
家族達は私のそんな気持ちを知ってか知らずか、明るくいろいろと話しかけてきた。

食事が済むと、小学生2人は学校へ、そしてパパもまた仕事に戻った。
残された女達はまた部屋を片づけて、
おしゃべりをしながら午後のひとときを過ごす。
ハンマムに入ってほっぺたも身体もつるつるになった私とメリアンが、
写真を撮ろうと提案し、みんなで記念撮影をすることになった。
私が鞄の中からカメラを取り出すと、
メリアンとファティマがちょっとだけ時間をちょうだいと言って、
たんすの上からえんやこらと、積んであったスーツケースを降ろしてきた。
何が入っているのかと思えば、
その中には彼女達の一張羅であるよそ行きのスーツが奇麗にたたんでしまってあった。
せっかく写真を撮るのだから、思いっきり御目化しして撮ろう!というわけで、
急遽私達のメークアップタイムが始まった。
メリアンとファティマがよそ行きの服に御召しかえしていたので、
私も着ていたパジャマを脱いで、
メリアン達が奇麗に洗濯してくれていたジーンズとセーターに着替えることにした。
一応日本から持ち歩いていた化粧道具を取り出して、
ハンマムの蒸気ですっかり消え失せてしまっていた貧弱な眉毛を念入りに描き直す。
メリアン達は手鏡に向かって口紅を塗り始めた。
私が持っていた口紅を見せて、試してみる?と尋ねると嬉しそうに肯いた。
紅筆を取り出して、メリアンとファティマとにそれぞれ違った色の口紅を塗ってあげた。
私には女姉妹がいないから、
なんだかこうやって一緒に無邪気にはしゃぎながらお化粧をすることが
とても楽しかった。
もしも妹やお姉ちゃんがいたら、
時々こんな風に自分の化粧品を貸し合ったりメイクし合ったりするのだろうか…
なんだか楽しそうだなぁ
3人娘はすっかりご機嫌で其々の顔を見合わせて、誉めあった。
「すごーい!」「奇麗!」「まるでモデルみたいだよ!!」
私達のメークアップ姿を見て、ママも負けてはいられないと久しぶりに鏡に向かい、
髪を梳かして身繕いを整えた。
記念撮影の準備が整い、おばあちゃんも仲間に入って、
まずは大きな居間のソファに座ってみんなでポーズをとる。
肩を抱き合い、にっこり笑ってレンズに向かった。
下の階にいたミーナのだんなさんに何枚も何枚もシャッターをきってもらった。
今度はここで、次は娘達3人で、それから今度はママと一緒に…

隣の部屋で寝込んでいるはずのモハメドの事などすっかり忘れて、
女達の賑やかな記念撮影は続いた。

ひととおりの撮影が済むと、娘達はお化粧を落とし、元のパジャマ姿に戻った。
ママも再び髪を上げていつものママになっていた。
みんなまるで、ひととき華麗に咲いたシンデレラの魔法が解けたかのように、
またたく間に変身から立ち戻っていた。
彼女達は普段、派手なお化粧や服装をすることはできないそうだ。
家の中で過ごす事も多いので、質素な姿で生活している。
だからあんな風に何か特別な口実がある時は、着飾る事を楽しむのだろう。
若い女の子なら尚更だ。
この国では、まだまだ男社会が息巻いている。
街のカフェの椅子で座っている女性はだいたいが観光客だったりする。
男達が昼間外でミントティーをふるまい合いながら世間話に精を出す間、
女達は自宅に人を招いて井戸端会議に花を咲かせる。
女達がつましくも素朴な話題で豪快に笑い、
そして男達はビジネスや社会の話題を肴に悲しく唄う。

電話のベルが鳴った。
パパからの電話だった。
わざわざ仕事場から掛けてきたのだろうか。
私と話したがっているというので電話口にでた。
雑音が受話器の中を占領している間に
一言だけ私が聞き取り、理解できた言葉があった。
“MOHAMED, POR FABOR!(モハメドを、頼みます)…”
今夜日本に向かって旅発つ私に、
パパはどうしてもその一言が言いたかったのだろうか…
その一言でどれほどパパが彼の事を思い、愛しているかが
私には解ったような気がした。

パパは1人息子のモハメドをとても誇りに思っている。
彼が何カ国語も話す事ができて、とても賢く優しい青年に育っている事を、
嬉しそうに夕べ私に話してくれていた。
モロッコにはなかなかいい仕事も少なく、
せっかくの有望な彼の未来を何か花開かせる事ができないかと案じ、
気にかけている風だった。

世界中に自分の子供を愛さず、誇りに思わない親なんていないのかもしれない。



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プロフィール
HN:
masu
年齢:
54
性別:
女性
誕生日:
1969/09/27
職業:
一級建築士
趣味:
しばらくおあづけ状態ですが、スケッチブック片手にふらふらする一人旅
自己紹介:
世田谷で、夫婦二人の一級建築士事務所をやっています。新築マンションからデザインリフォーム等をはじめ、様々な用途の建築物の設計に携わっています。基本呑気な夫婦で更新ペースもぬるーく、更新内容も仕事に限らずゆるーく、でもていねいに、綴っています。
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