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ノイファイミリーの日常、息子の成長など・・・
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気が付くと、2時近くになっていた。
モハメドが、今度は一緒に昼食を作ろうと言いだした。
「クッキング?ここで?」
「そうさ。旅の間、ずーっとレストランの食事じゃ胃がもたれるし、何より高くつくよ。
だから食事は自分で作る方がいいのさ。
大丈夫。このホテルには僕の友達がいるし、みんな親切な人達だから、
僕らがここで料理をしていたって何も言われやしないんだよ。」
彼は私の懐具合を随分とよく把握してくれている様だ。

どこから持ってきたのか、トマトやスパイスが混じった挽肉、
ビニール袋に入れられたオリーブオイルや紙に包まれたスパイス達が、
次から次へと屋上に運ばれてきた。
ガスボンベや鍋までが登場して、
“Let’s 青空クッキング!!”
屋根の上で、Fezの街を眺めながら、自分達の食事を作るなんて…
おもしろ過ぎる!!!

「さあ Travaiyer!!」
モハメドが鍋の中でオリーブオイルと一緒にグツグツ煮えているトマトの上に、
挽肉をくるくると器用に団子にしてほうり込む。
私も見様見真似で一緒になって団子を作ったが、
何故かどれもお世辞にも品が良いとは言えないくらいにでっかくなってしまい、
2人でケラケラ笑いながら、次々と鍋にミートボールをほうり込んだ。
日本には“働かざる者食うべからず”という諺がある。だから…
「Travaiyer pour manger(食べる為に働け)!!」
私がおどけてそう言うと、モハメドは笑っていた。

トマトとミートボールの煮込み、パン、そして万国共通のCOCAが2人の昼食。
煮込みはとっても美味しくて、
しかもすごーくお腹が減っていたので物も言わずにモリモリ食べてしまった。
私にはスプーンを貸してくれたけれど、
モハメドは右手とパンを上手に使って器用にこぼさず食べていた。



食事も済んで、後片付けをして。
食後の運動がてらもうひとまわりメディナの中を歩くことにした。
話で聞いていた、パンの焼き屋さんを覗いた。
各家庭でパンの生地をつくり、ここに来て、おじさんにでっかい釜で焼いてもらう。
うすっぺらい長方形の鉄板の上に直径30cmくらいの丸いパンがたくさん焼けていた。

それから、フンドゥークの中へ入る。
ここはその昔美しい宿屋として使われていたらしい。
私が入ったフンドゥークは、今はバブーシュの工房になっていた。
ここでも大人達から子供達までが、せっせと働いていた。
子供達は学校にも行かずに、小さな頃から大人に混じって働きだし、
Fezの伝統工芸の技術を身につけていくという。
中庭を囲み、小さな部屋に仕切られた工房で、朝から晩まで働いている。
いくらメディナの中に潜む中庭が砂漠の中のオアシスのような空間であっても、
そこは決して恵まれた環境とは言えない。
それでも人々は少しでも楽しく、快適に働こうと、
薄暗い工房でモロッコ音楽を響き渡らせ、リズムに乗りながら各々の仕事をしていた。

その後、太鼓や木彫りの置物をおいてある店やベルベル絨毯屋さん、
スパイスや香水を売っている店などを覗いたが、
もう何も買うまいと思っていたのでミントティーだけご馳走になり、
モハメドとそれぞれの店の店員さんとの世間話を聞いただけで、
シーズンオフの店の売上には協力しなかった。



夜になり、かなり歩き疲れたので、
モハメドに今日はそろそろホテルに戻って休むと告げた。
そして、もしもよかったら明日もまた街を案内してほしいと頼んだ。
2日歩いてみて、
この街を1人で歩く事がどれ程エネルギーを必要とするかが少し把握できた。
それに彼とこのままもう会えなくなってしまうのが寂しかった。
せっかく出会えたのに、たった1日一緒に過ごしただけで、
これからもう永遠に逢えないかもしれないと思うと残念でならなかった。
彼は私が絵を描いたり文章を書いたりしている間、
私の邪魔にならない様、とても気を使ってくれていた。
私に、好きなところで好きなだけ立ち止まらせてくれた。
時として頼もしいガイドであり、必要なときにその存在感を表に出し、
そうでないときは空気のようにその存在感を消してくれた。
モハメドは喜んで私の申し出を受け入れてくれた。
そして明日から、さっき昼食を摂ったカスカドホテルに泊まるよう、
手配してくれると言った。
私は明日から再び、60DHの安宿生活者となる事にした。
明日の朝10時にカスカドホテルで待ち合わせをして、
タクシー乗り場まで送ってもらった。

別れ際、約束の50DHを彼に渡そうとしたら、思いがけない返事が返ってきた。
「君はもう僕の友達だからガイド料はもらえないよ。」
「だって、これは約束だもの。あなたには今日とても親切にしてもらったし、
私の気持ちだから…」
私には、他に彼に対する感謝の表し方が思い付かなかった。
そして50DH札を彼のシャツのポケットに押し込み、
タクシーに乗ってホテルに戻った。


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プロフィール
HN:
masu
年齢:
54
性別:
女性
誕生日:
1969/09/27
職業:
一級建築士
趣味:
しばらくおあづけ状態ですが、スケッチブック片手にふらふらする一人旅
自己紹介:
世田谷で、夫婦二人の一級建築士事務所をやっています。新築マンションからデザインリフォーム等をはじめ、様々な用途の建築物の設計に携わっています。基本呑気な夫婦で更新ペースもぬるーく、更新内容も仕事に限らずゆるーく、でもていねいに、綴っています。
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