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ノイファイミリーの日常、息子の成長など・・・
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ラムラニさんが乗ってきた小っちゃいフィアットに乗り込み、旧市街の方へ向かう。
隣車線を同じような赤いフィアットがたくさん追い越していく。
ルーフに黄色いPetit TAXIと書かれた看板をくっつけて。
まずは高台からFezの街を見下ろそうと、私達の乗った車は丘を登って行った。
丘の上から見下ろすFezの街並。
あちこちにミナレット(尖塔)が見える。
その周りにひしめく日干し煉瓦の家々。
メディナには道が見えない。
丘なりに広げられた絨毯の柄の様に、家々が不思議な模様を描いていた。

そこからまず、陶工区に向かった。
モザイクタイルの工房に入ると、そこでは5,6歳の子供も大人に混じって働いていた。
見事な手捌きでタイルにモザイクの柄を下書きして、それを別の子供が器用に削っていく。
ここではこんなに小さな子供も、1つの立派な戦力として使われている。
子供とはいえ、彼等が自分の仕事に対してとても誇りをもっているということが、
側で見ているだけで伝わって来る。
納得がいかない線を引けば、自分が肯ける線を引くまでやり直し、
リズムに乗って手を動かしながら、その動きに酔いしれているようでもあった。
私が感心しながら見ていると、彼らはちょっと緊張しながらも、
得意気に自分達の技を披露してくれた。
この小さな手から、
あの素晴らしいモザイクタイルの1片1片が作られているのかと驚かされた。

陶工区を出て、車でエルルシフ広場まで行く。
いよいよメディナの中へ入るのだ。世界一の迷路の中へ。
まずは一番奥にある皮なめし職人区に足を踏み入れる。
独特の匂いが鼻を突く。
道は狭く入り組み、気をつけて歩かないとロバの糞を踏んづけるハメになる。
しばらくは、下水の匂いとロバの糞の匂い、皮の匂いとが入り交じって、
また少しブルーな気分に入ってしまった。
モロッコは決して美しいところではない。
写真やガイドブックで紹介されている、楽園の様な迷宮が待っているわけではない。
もっともっと、ずーっと泥臭く、生臭いところだ。
物乞いも沢山いるし、汚れた水で身体を洗う人もいる。
着ている物も粗末だし、
今まで見てきたヨーロッパの古い街の路地などとは随分とかけ離れている。
本で紹介されているような、星がいくつも並んだホテルなど、
ここで暮らす人々は多分一生かかっても泊まる事はできないだろう。
そんな彼等から、日本人も含めて、外国の観光客が金持ちに見られ、
いくらか儲けてやろうと思われても、仕方のない事なのかもしれない。
革製品の土産物屋のルーフから皮職人が皮をなめし、
色をつけているところを眺めた。
いくつも並んだ水槽の中に、長年入れ替える事なく付け足しを重ねた、
うなぎ屋の秘伝のタレみたいな色をした液が入っている。
よく見るとその水槽の内側にもタイルが貼られていた。
数人の男達が、太陽の下で話しをしながらその液につかり、仕事をしていた。
私はラムラニさんにお願いして少し時間をもらい、
サラサラと数分間、そこで鉛筆を走らせた。

革製品のメディナを出てから、
銀細工のメディナ、真鍮のメディナ、絨毯のメディナ… と次々に案内された。
ぐるぐると訳も分からず歩き回り土産物屋の商魂逞しさに圧倒され、
とうとう私も小さなベルベル模様のラグを買わされてしまった。
60DHのホテルを目安にしていた私がなんと1800DHもするラグを買ってしまうなんて…
(もちろん支払いはカードだ) 
どう考えてもこれはボったくられたとしか言いようがない。
だけど、「2階の商談室へどうぞ…」なんて少し目つきがおかしいアラブ人に導かれ、
薄暗い四方を絨毯に囲まれた部屋の中で
「これはいい買い物ですよ、お客さん。ふぉっふぉっふぉっ…」
と不気味ににんまりされたら、誰しもびびって多少財布に損害があろうとも
早くここから脱出せねばと思うに違いない。
痛い出費ではあったものの、肝心のラグはなかなか気に入ったデザインだったことだし、
まあこれも一つの授業料さと諦めた。

歩き疲れて時計を見ると、もう2時近かった。
ラムラニさんにお腹が減ったから昼食を摂りたいとお願いしたら、
メディナの中の豪華なレストランに案内された。
天井が高く、モザイクタイルで飾られた壁や高価そうな絨毯のひかれた室内は、
まるで宮殿のようだった。
店の名前を聞かなかったのでよくは解らないが、
多分ガイドブックに紹介されるような、高級レストランなのだろう。
私1人店の中に通されて、
ラムラニさんは私の食事が済むまで外で友人と話しをしながら待っていた。
私としてはそこら辺で売っているサンドイッチでもかぶりつければいいやと思っていたのだが、連れてこられた以上注文しないわけにはいかないように思えて、モロッコ風サラダとクスクスを注文した。
モロッコ風サラダには生野菜が何種類か山盛りに盛られていた。
お腹が弱い私は、生野菜を食べる事に不安を感じ
(なのに何故この時サラダなんかを注文してしまったのかよくわからない)
結局茹でてあるジャガイモだけ食べた。
クスクスには、私の嫌いなニンジンとオリーブの実が、これまた山盛りになっていて、
これも奥の方に埋もれていたお肉だけ食べて残してしまった。
ほんとうにもったいないオバケが出てきそうで申し訳なかった。
お店のお兄さん、そして貧しい人達、ごめんなさい。

喉か渇いていたのでレモネードを飲み、
絵日記を綴ってしばらくそのレストランでねばっていた。
勘定書が仰々しく銀の盆に乗せられてきて目を通すと、びっくり仰天。
130DHもの昼食なんて私には身分不相応。
日本でだって、
ずっとランチは買い置きのカップラーメンが続いていたっていうのに…

それでももう、今日は出費の日と諦めて、流れに身を任せる事にした。
ひととおりメディナの中をぐるりと歩きまわり、3:00頃車でホテルに戻った。
ラムラニさんは、少し休んでから夜どこか案内しようかといってくれたが、
まだまだ旅は始まったばかりだし、
仕事と長いフライトの疲れも残っていたので今日はもう休みますと伝え、お別れをいった。
私にはこの後まだ執筆活動も残っている。
どうしても人と一緒に歩いていると、
なかなか思うように立ち止まったり書いたりができない。
そんな状況にも、少し疲れていたのかもしれない。

別れ際、ラムラニさんは自分の名刺を差し出して私に言った。
「Fezにいる間に何かトラブルが起きたり、困ったことがあったら、
ここに書いてある携帯NO.にコールすれば飛んでくるよ。
君はもう僕の友人だからね。」
ありがとう ラムラニさん!!!

昼間あんなに豪勢な食事を摂ってしまったので、
夜は質素にフランスパンを一口二口かじる。
夕方少しホテルの周りをふらついて、フランスパン半分と、COCAを買っていた。
部屋でぼそぼそとそれらを口にしながらカリコリと今日の出来事を綴る。
それにしてもこの国ではアルコールがなかなか手に入らないのが辛い。
飛行機から持ってきた赤ワインもすでに空っぽになってしまっていた。
何気なくパラパラとホテルの案内に目を通していると、
なんとこのホテルにはバーがあると書かれていた。

なんだ。こんな近くに、アルコールがあるではないか!

早速スケッチブックとルームキー、小銭入れを持って部屋を出た。
フロントにバーが開いているか聞くと、「もちろん!どうぞ!」と2階に通された。
7.8人座れる小さなカウンターと、その後ろに2テーブルくらいが並んだ、
こじんまりしたバーだった。
お客は私1人。
バーテンダーにジントニックを注文した。

お金がないない言いながら、
こんなところでちゃっかり一杯やってる私は一体何を考えているのやら…
自分で自分に呆れたが、
追いつめられるまで私には計画性や経済観念というものが生まれない。
とりあえず旅は始まったばっかりで、財布にはまだ何枚かお札が入っている。
先のことは後で考えればいいや… 
と昨日のホテル代の半分くらいの高価なジントニックをちびりちびりと飲み干した。

バーを出て、部屋に戻ってバスタブにお湯を張る。
ここにいる数日間は、とりあえずバスタブのある生活だ。
昨日の冷たいシャワーとは違って、ここはバンバンお湯がでる。温かいお湯が。
ゆっくりとお湯に浸かって疲れを癒す。

軟弱者で贅沢者。

もう一人の私が私自身を非難する。
私は、軟弱者。
私は贅沢者。

それでも、いろいろとカルチャーショックを受けながら、
自分なりにこの目の前の現実を受け止めながら、
そしていろんな事に感謝しながら、
昨日とは打って変わってぬくぬくと暖房のきいたへやで、
フカフカの毛布に包まって、眠りに就いた。
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プロフィール
HN:
masu
年齢:
54
性別:
女性
誕生日:
1969/09/27
職業:
一級建築士
趣味:
しばらくおあづけ状態ですが、スケッチブック片手にふらふらする一人旅
自己紹介:
世田谷で、夫婦二人の一級建築士事務所をやっています。新築マンションからデザインリフォーム等をはじめ、様々な用途の建築物の設計に携わっています。基本呑気な夫婦で更新ペースもぬるーく、更新内容も仕事に限らずゆるーく、でもていねいに、綴っています。
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