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ノイファイミリーの日常、息子の成長など・・・
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その後、私は一人で街に出た。
いつもの広場まで、多少迷いながらもたどり着いた。
どこかのカフェで絵葉書でも書こうと思い、適当なところを探した。
少しフラフラして、結局、さっきも来た同じカフェの椅子に腰掛けた。
もしもアリ達が、私がいないと心配して探しに来ても、
ここならすぐに見つけてくれるだろう。
例の如くcafé with milkを頼み、
さっき買ったシェフシャウエンの絵葉書を何枚かしたためた。
どのくらい経っただろう。聞き覚えのある声で、
“Hi! Ca va?”
と声を掛けられ顔をあげると、アリとアブラヘムとジャパン君が、
ポップコーンをぶら下げて立っていた。
「モハメドは?」とアリに聞かれ、疲れて眠っているとだけ答えた。
みんなが私と同じテーブルにつき、それぞれミントティーやコーヒーを注文した。
アリが私にポップコーンを1袋くれた。
「これは君の。そしてこれはモハメドの。」
2つのポップコーンの袋がテーブルの上に置かれた。
「アリの分がないよ」
「僕はもう、さっきたくさん食べちゃったから…」
本とにアリは、優しいんだ。
モハメドとちょっぴり気まずい思いをして、
沈んでいた私に、アリは笑顔を取り戻してくれた。
「じゃあこれを2人で食べよう!そしてこっちはモハメドにあげるの。
だって彼が目覚めたとき、なーんにも食べ物がなかったら… 
彼はきっと、私を食べちゃうよ!!」
私がそう言うと、アリは少し安心したように笑った。
しばらくして、モハメドかやって来た。
彼はみんなと話しながら、しばらく私とは目を合わせなかった。
でもその内に、つんつんと私の靴を蹴飛ばしてちょっかいを出してきた。
私が彼の顔を覗き込むと、そこにはいつもの悪戯っ子のような表情が戻っていた。

アブラヘムやジャパン君が歌を唄いだした。
テーブルや身体を太鼓にして、
いつしか夕闇のシェフシャウエンのオープンカフェは、天然歌声喫茶と化していた。
モハメドやアリも身体を揺らし、声を合わせる。
次から次へと彼等の知っている歌が溢れ出る。
歌詞のわからないところはハミングで。
私も知っている曲がでてくると、ここぞとばかりにはりきって参加する。
知らない曲は、身体で参加。
星空の下、陽気なアラブ人達と唄う、楽しいひととき…
時々英語でアラブ風の歌を唄っているので私が不思議そうにしていると、
「僕らはよくアラビア語の曲を英語にして、替え歌を作って遊ぶのさ」
と教えてくれた。
私達の歌声に、お腹の虫の声が参加してくるまで、歌合戦は続いた。

私とモハメドとアリの3人だけ、先に席を立った。
少し歩こうとアリが言うので、着いて行った。
途中、1番お腹が減っていたモハメドだけサンドイッチを買って、
歩きながらかぶりついた。
人通りの多い坂道を下り、旧市街の外まで来た。
この先に公園があるらしい。のらりくらりと3人並んで夜道を歩く。
歩いている内に、再びモハメドの口数が減っていった。
私は努めて明るく鼻歌を歌っていた。
アリも私やモハメドの心中を察してか、無邪気なフリをしてジョークを飛ばし、
私達の気を和ませようとしてくれていた。
街の外れまで来ると、突き当たりに公園があった。
中に入り、3人並んでベンチに腰掛ける。
しばらく、無言の時が流れた。
「…静かだね。ここは…」
アリが囁くような声で言った。
「うん」
私は小さく肯いた。

3人で星空を見上げながら、それぞれに各々の思いを巡らせていた。
私は、幸せをかみしめていた。
この旅で出会った出来事や人々を1つ1つ丁寧に思い返しながら。
この国で私が学んだ事、感じ取った事は
この星の数よりもたくさんあったような気がした。
そして私はきれいさっぱりと、自分の心の洗濯をした。
なんだか、自分の中でくすぶっていた歪んだ気持ちや醜い部分が、
全て根こそぎ洗い落とされ、取り除かれたような感じだった。

しばらくして、公園を出た。
再び旧市街の方へと歩いていく。
右にステップを踏みながら陽気におどけてみせるアリがいて、
左に私との別れの時が近付いている事に苦悩するモハメドがいた。
そんな2人のはざ間で、私はただ、自分の心の赴くままに振る舞っていた。
屈託なく笑い、踊るように歩いていた。
私は大好きな映画、“冒険者達”を思いだしていた。
自由を求めて旅に出る3人の若者達。
何物からも解き放たれて、思うが侭の生活を送る彼等。
私はまるで自分がその中のレティシアになったような気がしていた。
舞台や背景は違っていても、
今の私の境遇は、レティシアそのもののように感じられた。
そして、あんなにも素敵な映画の中の出来事が、
今形を変えて現実として、自分の身に降りかかっている事が、
とても不思議であり、そして幸福だった。

ホテルに戻る途中で、3人分のサンドイッチを買った。
そこでようやく、モハメドに再び笑顔が戻った。
残り少ない時間をHappyに過ごせるように、彼は一生懸命努力してくれていた。
3人で腕を組んで、夜道を歌いながら歩いた。
“If you cry,I cry too!! If you fly I fly too!!”
私達のテーマソング。
いつもおどけてそう歌い、彼らは私を笑わせた。
私の旅の時間が、限りある時間が、幸せであるように…
喜びも悲しみも僕らはみんなで共有すればいい。 
彼らの望みはたったひとつ。ただそれだけ。


 私がベットの中で絵日記を綴っていると、アリが部屋に入ってきた。
私の枕元に座り、旅のノートを覗き込んだ。
小さな文字でびっしりと書き込まれたノートを見て彼は言った。
「思い出を書いているんだね。
これを見て、君は日本で、僕たちの事を思い出すんだね。」
アリもまた、私やモハメドと同じように、私達3人の別れを悲しんでいた。
いつもいつも陽気に振る舞って、
たった1つ知っていた日本語で「ダイジョウブ?」と私を気遣ってくれていたアリ。
“Ca vas?”
「ダイジョウブ…」何気なくよく使われるこの言葉は、
私の日本の親友寛子ちゃんが大好きだった言葉だ。
彼女は友達や職場の仲間、そして自分自身にも、よくそう言い聞かせていた。
「大丈夫、大丈夫」そう言ってると、本当にどんなに追いつめられた時でも、
なんとなく大丈夫な気がしてくるの。だから大丈夫! 
彼女の“大丈夫”に励まされた人は数多い。
私と同じで、根っからの能天気。
カラカラでパリパリの、揚げたての川海老みたいな性格をしている。
ここモロッコにもそう言って、私を元気付けてくれる人がいた。
大丈夫。Ca vas. 
日本語で聞いても、フランス語で聞いても、
その言葉の持つおおらかさと温かさは変わらなかった。
そしてその言葉を使う人も、同じように心優しい人だった。
悲しみも、寂しさも、涙も、全て自分の胸に押し込んで、
いつも変わらぬ朗らかさで、周りの人間に癒しを与える事を惜しまない。
そんな人だった。



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masu
年齢:
48
性別:
女性
誕生日:
1969/09/27
職業:
一級建築士
趣味:
しばらくおあづけ状態ですが、スケッチブック片手にふらふらする一人旅
自己紹介:
世田谷で、夫婦二人の一級建築士事務所をやっています。新築マンションからデザインリフォーム等をはじめ、様々な用途の建築物の設計に携わっています。基本呑気な夫婦で更新ペースもぬるーく、更新内容も仕事に限らずゆるーく、でもていねいに、綴っています。
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