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ノイファイミリーの日常、息子の成長など・・・
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シェフシャウエンの朝は冷え込む。
咳込んで、少し風邪気味だったので、早速広場のカフェで朝食をとり、薬を飲む。
日差しが眩しい。
シェフシャウエンは、本当に魅力的な場所だ。
石畳の細い坂道、白壁に青い窓、子供達の声、小鳥のさえずり。
そして、太陽と山。
モハメドが私に、日差しが眩しくないかと聞くので、
「大丈夫。だって太陽は私のママだもの!」
と言ったら笑っていた。
ここで暮らすのも、いいかもしれない。
とってもとっても居心地がいい。
Fezやサハラとは、全然違った魅力だ。
フランスもそうだったけど、モロッコも地方によって人々の生活は全く違う。
同じ国の中なのに全く違った要素がたくさん詰まっている。
面白さが盛り沢山だ。
朝食をとってから、大パノラマを眺める為に歩き出す。
途中で小さなバンに拾ってもらって、山の途中まで登る。
シェフシャウエンで一番豪華なホテルの傍で、街を見下ろし、山と太陽に抱かれる。
モハメドやアリと日向ぼっこ。
ああー! 気持ちいーい!!

そこでモハメドが、いろんな話をしてくれた。
人生を思いきり楽しむ方法を彼等はよく知っている。
私の人生で大切な物は、愛情と、そして仕事。あと、忘れちゃならない旅!
だけど彼等は全然違う人生観を持っている。
モロッコの人々は、たとえどんなに学校へ行って一生懸命勉強しても、
仕事につけない人も多い。
貧富の差も大きい。
でも、彼等は自分の人生を幸せだと思っている。
もしも彼等に立派な仕事があって、たくさんお金があって、大きな家に住み、
高級な車に乗っていても、彼等は決して幸せではない。
モハメドは言った。
“僕らは貧しい。でも、心は誰よりも豊かだ。だから僕らはとっても幸せなんだ…”

山の上の方に、家が点々と建っている。
彼等はあんなに不便なところで生活して、クレイジーだと思うかい?
とモハメドは私に聞いた。そして言った。
「NO.彼等は決してクレイジーなんかじゃない。
彼等は山の上に暮らし、羊を飼い、野菜を作り、それを食べて暮らしている。
自給自足で。
下界から隔絶されたあの土地には、悪い事は何もない。
争いごとも、妬みや憎しみも。
その代わりきれいな空気、太陽の恵み、美しい風景、豊かな心を彼等は持っている。
彼等は、お金は持っていない。だけど、とっても豊かな人々なんだよ…」
それからモハメドはカスカドホテルで会ったジョンの事を話してくれた。
ジョンはアメリカに大—きな大きな家を持つ、大金持なのだそうだ。
モロッコでも、星がいくつも並んだホテルに滞在し、
1日に計り知れないお金を使う事だってできる。
だけど彼は決してそうはしない。
カスカドホテルの様な安宿に幾日も滞在し、土地の人々と触れ合い、話しながら、
本当のこの国の姿を味わっている。
モハメド達は最初、彼の事を理解できなかったという。
でも、ジョンと何時間も何時間もいろいろな事を話しながら、
ようやくうちとけ合い、理解できるようになったそうだ。
私は、いつも同じ服を着て、
彼の身体には小さすぎるカーディガンの裾や袖を引っ張りながら、
弾丸の如く話をするジョンの姿を思い浮かべた。

モロッコは観光国だ。
多くの外国人がこの地に憧れ、旅情を掻き立てられ、訪れる。
だけどモロッコの人々が外国に行く事はとても難しい。
ビザの申請も大変で、なかなか許可が降りないという。
外国に行けるモロッコ人は限られた、経済的にもゆとりのある人達だけだそうだ。
だからモハメドやアリのような若者達は、
ガイドをやったりホテルで働きながら外国の観光客といろいろな話をする。
世界中の人達からその国の話をきき、様々な事を学ぶのだという。
そして彼等は、自分の国の中を旅してまわる。
モロッコにはたくさんの要素が詰め込まれているので、
外の街や大自然の中を旅する事が、彼等にとってはとても楽しい事なのだそうだ。

いろんな生き方があるのだと思った。
ほんの何十年か前には、日本にも同じような生活があったのだろう。
戦争に負け、何もないところから、私のパパやママ達の年代の人達は生まれ育ち、
働き、がむしゃらに時を過ごし、
そして手に入れたものは、世界に誇る富であり、財産だった。
そのお陰で私達はあふれる物に囲まれ、世界中を行き来できる自由を手にしている。
でも、何かを手に入れようとすれば、何かが犠牲になる。
せっかく自由にいろんな世界を見る切符を持っているのに、
それを有効に使う術を知らない人も多い。
経済的にゆとりがあっても自分自身の時間すら支配する自由はない。
人間は一体何のために、何を手に入れるために生きてきたのか…
世界一豊かになった日本は、今闇の中にいる。
太陽に一番近くまで上り詰めようとしていながら、
日本の空には太陽が見えない。
限りなく貪欲に、全てを手に入れようとしたのに、
本当に大切な物を失ってしまった。
そうやって人間は、愚かな行動を繰り返す。
過去に、遥か昔から、私達の先輩達が繰り返してきた事と同じ過ちを、
絶えず繰り返す。
それが、人間という生き物なのだろうか。
だからこそ、愛すべき生態なのだろうか。
人は欲しいものを手に入るために生き、働き、そして全てを手に入れた瞬間が、
全てを失う瞬間だということを、そのとき初めて知るのかもしれない。
変わらずにいようとすることが豊かな事なのか、
絶えず変わろうと努める事が豊かさへの道なのか… 
その答えは誰も知らない。


薪を担いだおばあちゃん2人が、山の上の方から下って来て、
私達の傍を通り過ぎ、眼下に広がる街へと降りて行った。
のんびりとした時間。目の前の大自然。
こんな生活も、いいかもしれない。
私はこの土地に、すっかり取りつかれてしまった。
至極の時を過ごしていた。
こんな時間が、いつまでもいつまでも続いて欲しいと願った。

ホテルに戻り、モハメドがルーフに行こうというので、毛布を持ってあがった。
夕暮れ時のシャウエンの街にぽつぽつと明かりが灯りはじめていた。
その向こうで、
だんだんと空の闇の中へと姿を隠してゆく山が私達を見下ろしていた。
空の色と街の喧騒がゆっくりとフェードアウトしていった。
静かな時間が流れていく。世界中に私達2人しかいないような感じがした。
いつになくモハメドは口数が少なくなっていた。
時はゆったりと流れているようで、
それでも着々と、私達に残された時間は消費されていた。
始めのうち、まだまだ先の事と思っていた別れと言う言葉が、
時とともにちらちらと私達の脳裏をかすめるようになり、
それはだんだん侵略の範囲を増していった。
何千kmも先から少しずつ、
じわじわと波が近付いてくるように少しずつそれは気配を強めていった。
私との別れの時が近づくにつれ、
だんだんとモハメドの気持ちが沈んでいくのがわかる。
彼はまだ姿を見せぬその気配に怯え、
そしてそれに立ち向かうために彼自身の中で葛藤を繰り返していた。
2人の間に重たい空気が流れていった。


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masu
年齢:
48
性別:
女性
誕生日:
1969/09/27
職業:
一級建築士
趣味:
しばらくおあづけ状態ですが、スケッチブック片手にふらふらする一人旅
自己紹介:
世田谷で、夫婦二人の一級建築士事務所をやっています。新築マンションからデザインリフォーム等をはじめ、様々な用途の建築物の設計に携わっています。基本呑気な夫婦で更新ペースもぬるーく、更新内容も仕事に限らずゆるーく、でもていねいに、綴っています。
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