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ノイファイミリーの日常、息子の成長など・・・
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一晩中、バスは雪の中で止っていた。
朝にはサハラに到着するはずだったのに、明け方6:00頃ようやく走り出した。
真っ白な樹氷の中で夜明けを迎えた。
砂漠に向かう途中に、樹氷の中を通り抜けるなんて… 夢にも思わなかった。
止っているバスの中で、モロッコの人達の温かさをかみしめていた。
出会って間もない、私のために闘ってくれた、モハメドとアリ。
言葉の解らない私を家族のように迎えてくれたモハメド一家。
貧乏な私のために、
できる限りモロッコ人価格でチープな旅をさせてくれようとするモハメド。
彼の言葉が頭の中をめぐる。
「僕は君のガードマンだ。
誰かが君に変な真似をしようとしたら、僕が闘って君を守る!」
「僕らは君に高いお金を遣わせたくない。
その代わり、モロキャンプライスで、安くても、本当のこの国の姿を君に見せたい。
そして君の絵や文章で、本当のモロッコの良さを日本の人達に伝えてほしい…」

私の旅は、旅立つ前とは、随分とイメージの異なるものに変わりつつある。
最初は古い街並みを通り抜け、そこそこのホテルに日本に比べれば安い値段で泊り、
通りすがりの旅人として、眺めるつもりだった。
でも、いろんな人々と出会い、いつしか私の身体は、この国に溶け込んでいった。
この国の中で、つかの間の生活を営んでいる。
同じ物を食べ、同じようなライフスタイルを体験し、
同じ高さから同じ物を見て、語り合っている。
この旅は私に、生きる事について、
本当にたくさんの事を教えてくれている。
日本の中での私は、本当にちっぽけな人間だった。
仕事に追われ、時間に追われ、
その上あれも欲しい、これもやりたいとあれこれ欲張って気持ちばっかり先走り、
結局は何も手に入れられず、そんな状況にイラついていた。
でも、この雄大なアフリカ大陸の大地に抱かれて、
何もかも全て、つまらない、ちっぽけな事のように思えた。
ろくに風呂にも入らず、髪もぼさぼさで着たきりすずめ、化粧なんてせず、
半分鼻たれ小僧みたいな今の自分の姿。
バスの汚れたガラス窓に、うっすらと浮かぶ自分の顔を眺めながら、
それでもなお、今の私は本当にいい表情をしていると思った。

雪のためにバスが一晩中止っていたので、
結局今日は殆ど1日中バスの中で過ごす事になった。
ところどころでバスは止り、また走り出す。
モロッコのバスは、乗客がちゃんと全員乗り込んでいようがいまいが、
構わず急に走り出す。
うっかりしていると、置いてきぼりになりそうになる。
一度モハメドと私とモハメドの事を子供の頃から知っているというおばさんの3人で、カフェでコーヒーを飲もうとした。
注文をして席につき、
私達がとってもお似合いで、モハメドは本当にいい青年だから、
結婚しちゃいなさい。日本につれて帰っちゃいなさい。
なんて身振り手振りでひやかされながら、コーヒーを待っていた。
少ししてコーヒーが運ばれ、
一口すすった途端に目の前に止っていたバスが走り出し、
あわてて走っているバスの扉をドンドンとたたいて飛び乗った。
それはそれはスリル満点だ。

アトラスを越えると、車窓の風景はガラリと変わる。
乾燥した、赤茶けたカスバが点々とし、岩山が迫る。
谷間をゆったりと河が流れ、河の周りにだけ樹木が生い茂っている。
私はアメリカには行った事がないけど、
グランドキャニオンなんかもこんな感じなんだろうか…
青い空と赤茶色の岩山が、どこまでもどこまでも続く。
そんな中をおんボロバスはひた走る。
失ったものを取り返そうとするかのように。ムキになって…

太陽が山の向こうに隠れ、月が顔を出す頃、バスはリッサーニの街に着いた。
ガイドが客引きにバイクに乗ってつけまわす。
モハメドがガイドやグランタクシーの運転手達に
メルズーガに行って砂漠を観るために色々と交渉をしてくれたが、
今はシーズンオフで観光客も少なくグランタクシーも莫大な値段をふっかけてくる。
ランドローバーはなおさら高い。
あてにしていたモハメドの友達でランドローバーを持っている青年が、
今この街にいなかったようで、やむなくリッサーニの街に滞在し、
サハラ気分を味わう事にする。
もう幾日か滞在すればなんとか別の方法で砂漠も見る事ができるのかもしれないが、
私はどうしてもシェフシャウエンに行ってみたかったので、
砂漠は次に来た時、モハメドとアリと3人で訪れる事にした。

ホテルに入り、2階のカフェでミントティーを飲みながら、
面白い眼鏡をかけたホテルの主人とモハメドが、あれこれと話をしていた。
その間、私はずーっと黙っていた。
モハメドやアリに、
彼等が旅先でどんなに親しそうに挨拶をして、話をしていても、
MASUは何も話をしてはいけない。
誰かがHellow!!と声をかけてきても、
知らん振りをしているようにと何度も言われていたから。
彼等のアラビア語をBGMに、ずーっと暮れゆく街を窓から眺めていた。



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プロフィール
HN:
masu
年齢:
54
性別:
女性
誕生日:
1969/09/27
職業:
一級建築士
趣味:
しばらくおあづけ状態ですが、スケッチブック片手にふらふらする一人旅
自己紹介:
世田谷で、夫婦二人の一級建築士事務所をやっています。新築マンションからデザインリフォーム等をはじめ、様々な用途の建築物の設計に携わっています。基本呑気な夫婦で更新ペースもぬるーく、更新内容も仕事に限らずゆるーく、でもていねいに、綴っています。
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