忍者ブログ
ノイファイミリーの日常、息子の成長など・・・
2024-031 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 prev 02 next 04
222  221  220  218  217  216  215  214  213  219  211 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

夕べ飲んだ薬が効いたのだろうか。
目が覚めると、体中汗をかいていた。
下着やTシャツがぐっしょりと濡れている。
ベットの上でゆっくり起き上がると、頭がふらついた。
まだ体には、熱が少し残っているようだった。
シャワーを浴びたいと思ったが、そこまでの元気はまだなかった。
油断をすればすぐにでも、
今は影を潜めている熱が再び私の体を侵略しようと狙っている。
とりあえず、濡れた下着やTシャツだけ着替えることにした。
鞄の中から最後の着替えを取り出し、着ていた物を脱いだ。
タオルで首や手足を拭いてから、洗濯してあったTシャツを着た。
さらりとした綿の感触が心地よかった。

時計を見ると、10:30を回ったところだった。
普段なら、このホテルでの朝食の時間は11:00までになっている。
せっかく昨日オーナーが私のために朝食を用意しておいてくれると言っていたので、
あまり食欲はなかったが、起き上がったついでにジュラバをはおり、
部屋を出て3階のカフェテリアへ行った。

カフェテリアには、当然の如く誰もいなかった。
廊下を挟んで向かい側にあるキッチンにも誰もいない。
このホテルのカフェテリアはセルフサービスで、
いつもなら機械の中にコーヒーとホットミルクとお湯が入っていて、
カウンターに並んでいるカップに自分でコーヒーや紅茶、ココアなどを入れて飲む。
冷たいオレンジの生ジュースもある。
その横にドイツ風の黒いパンがスライスされて置いてあり、
パンぱ勿論ジャムゃバター、蜂蜜も好きなだけ取って食べられる。
ここのパンはすごくしっとりとしていて、パン生地の密度も濃く、
味も程よく塩がきいていてコクもありとても美味しい。
部屋で物書きをする時は、
よくトレイにコーヒーを乗せて部屋に持って行って飲んでいた。
後から自分でキッチンに片付けにくれば部屋で朝食をとる事も出来る。
ここは貧乏でいつもひもじい思いをしながら旅をしている私にとって、
とてもありがたいカフェテリアだった。
人の姿は見られなかったが、
カウンターの上にはいつものようにあの黒いパンがスライスされて、
乾燥してしまわないように袋に入って置かれていた。
各テーブルの上には、ジャムゃ蜂蜜が小さなバスケットに入って置かれている。
見るとコーヒーメーカーにも電源が入っていた。
近くに伏せて並べてあったカップをとり、
試しにコーヒーの注ぎ口のレバーを引いた。
少し煮詰まってはいたが、
コーヒーは湯気をたてながらなみなみとカップの中に納まった。
ミルクを探したが、それは見当たらなかった。
仕方なくパンを数枚とブラックコーヒーのカップをトレイに乗せて、
中庭に面した窓際の席に座った。
カフェテリアの入口から、赤い制服を着たボーイさんが入ってきた。
このホテルには廊下やカフェテリアなどに小型カメラが設置されていて、
その映像をフロントのTV画面で見ることができる。
防犯上の設備でもあるが、従業員の数を最低限に押さえながら、
お客が必要な時にサービスができるようにもなっているのだ。
ボーイさんもおそらくフロントの画面に映った私の姿を見て
様子を伺いに来てくれたのだろう。
挨拶をして、私は彼にコーヒーに入れるミルクをお願いした。
彼はバターも必要かと訊ね、
私が肯くと冷凍庫の中からカチカチに凍ったバターを取り出してくれた。
ホテルが閉まっているため、腐りやすい乳製品は片づけられていたようだ。
私は温めてくれたミルクとカチカチのバターを貰って、朝食をとった。

ホテルの中には、私の他にもう一人滞在者がいるようだった。
裏のビュッシ通りに面した部屋に、長期滞在しているらしきイギリス人がいた。
ボーイさんはカフェテリアの側にある彼の部屋のドアに向かって声をかけた。
コーヒーが入ったけれど飲みますか…?
扉の向こうからYESという返事が聞こえた。
そして50代くらいの男性が部屋から出てきて、
ボーイさんが入れてくれたコーヒーを飲んでいた。

私が半分くらいパンを食べたところで、オーナーのスティーブさんが
奥さんのタキさんと一緒にカフェテリアに入ってきた。
私はタキさんに挨拶をして、2人にお礼を言った。
今まで旅の途中にたくさんの人達が私を助けてくれたけれど、
どんなに私が感謝しているかを言葉で相手に伝えることができず、
とても残念だった。
もちろんみんな私の表情や仕種で理解はしてくれたけれど、
言葉を巧みに使いこなせれば、
もっともっと上手に私の気持ちを伝えられるのにと思っていた。
だけどタキさんには日本語でお礼を言うことができて、
私の言葉をスティーブさんにも伝えてもらえたので、なんだか気分がすっきりした。

2人はこれから近所を歩いてくると言ってカフェテリアを出て行った。
私は残りのパンを平らげて、再び部屋に戻って薬を飲み、ベットに潜り込んだ。
私にはまだ絵日記の続きを書くという課題が残っていた。
Fezにいた時から、あまりにも次々といろんな出来事に出くわすので、
絵日記は旅の工程よりもかなり遅れをとっていた。
パリに着いたら、1人でカフェの椅子に座って何時間でも粘りながら、
続きを書き進めようと思っていた。
だけど、今回はパリのカフェには1度も足を踏み入れる事はなさそうだ。
せっかく初めてクリスマス前のパリを訪れたというのに、
美しいイルミネーションや華やかに賑わう街の喧騒も、
この部屋の窓から眺めるに留まりそうだった。
横になりながら、窓の外をぼんやりと見つめていた。
今夜までになんとか体調を整えなくては…。
空港までは仕方がないから、タクシーを使おう。
夜までここでたくさん眠って、空港に向かい、飛行機に乗ってまた再び眠ろう。
日本に着いて、次の日からは仕事が待っている…
私の頭の中は、熱にうなされながらも現実モードに切り替わりつつあった。

何時の間にか眠っていたようだ。また身体がとても熱くなっていた。
小さな子供の頃のことは忘れてしまったが、
大人になってから風邪をひくことはあっても
こんなに高い熱をだしたことはなかったような気がする。
健康だけが取柄のような私が、久しぶりに、
しかも旅先で病に伏してしまったので、とても心細かった。
本当に今夜空港に行けるだろうか。
明日の夜には、自分の家に帰り着いているのだろうか。
私が日本から持ってきた薬は、
さっき朝食をとった後に飲んだ1錠で終わってしまった。
もう、風邪薬もアスピリンも残っていない。
サハラで、あの面白い眼鏡をかけたホテルの主人に
いくつか薬を分けてあげてしまっていたことが、今となっては悔やまれる。
時間を見計らって日本の自宅に電話をかけようと思った。
我家は家族全員がそれぞれ仕事を持っているので、
夜8時過ぎないと誰も家にいない。
ホテルの部屋から国際電話をかけようとしたが、
回線はつながっていないようだった。
仕方なく、フロントに行って電話をかけたいとお願いした。
オーナーのスティーブさんはまだ外に出かけていて、
さっきのボーイさんしかいなかった。
彼は電話の回線をつなげる操作の仕方を知らないようだった。
もうすぐオーナーが戻って来るから、ここで待っていなさいと言ってくれた。
私はフロントの前に置いてあった椅子に腰掛け、スティーブさんの帰りを待った。

“いいジュラバを着ていますね。お嬢さんはイスラムが好きなんですか?”
ボーイさんはにこにこしながら私に訊ねた。
彼はスリランカ出身で、実は彼もイスラム教信者なのだそうだ。
私がモロッコに行って、その帰り道にこのホテルに立ち寄ったことや、
イスラム文化を初めて見てその美しさにとても感動したことなどを話すと、
とても嬉しそうだった。
スリランカにも数多くのムスリムがいて、
素晴らしいモスクがたくさんあるのだと教えてくれた。
それから、私が熱をだして部屋で寝込んでいることを知ると、
アスピリンと水を持って来て、これをお飲みなさいと言ってくれた。
コップに入っている水の中にアスピリンを一錠落として溶かし、
ごくごくと飲み込んだ。
しばらくそこでスティーブさんの帰りを待っていたが、
彼はなかなか戻ってこなかった。
「お部屋で待っていて下さい。
オーナーが帰って来て、電話を使えるようになったら私が教えてあげます。」
ボーイさんにそう言われ、私は部屋に戻った。

ベットに入ってうとうとしていると、枕元の電話のベルが鳴った。
回線をつなげたから、日本にも電話をかけられるようになったと言われ、
早速家の電話番号をまわした。
電話口には、パパがでた。
熱が高いので明日成田まで迎えに来て欲しいと頼むと、
パパはとても心配していたようだ。
ホテルの人にお願いして病院に連れていってもらいなさいと言われたが、
表にでて病院まで行き、
フランス語でいろいろと病状を説明することも億くうだったので、
そのままベットの中で休んでいた。


PR
NAME
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS
TRACKBACK URL 
カレンダー
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
ブログ内検索
アーカイブ
最新コメント
[02/07 taka]
[11/24 春]
[06/18 tomoママ]
[06/15 後藤亜紀]
[04/25 後藤亜紀]
プロフィール
HN:
masu
年齢:
54
性別:
女性
誕生日:
1969/09/27
職業:
一級建築士
趣味:
しばらくおあづけ状態ですが、スケッチブック片手にふらふらする一人旅
自己紹介:
世田谷で、夫婦二人の一級建築士事務所をやっています。新築マンションからデザインリフォーム等をはじめ、様々な用途の建築物の設計に携わっています。基本呑気な夫婦で更新ペースもぬるーく、更新内容も仕事に限らずゆるーく、でもていねいに、綴っています。
mail
お問い合わせ、メールはこちらへ masumka19690927@me.com
バーコード
フリーエリア
"masu" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP @ SAMURAI FACTORY INC.
忍者ブログ [PR]